トマト体験記:その2

決戦当日の朝。

華麗な内装のバレンシア中央駅の中は、既に大勢の臨戦態勢のバカヤングたちで溢れ返っていた。
なぜか、もう上半身裸になっているやつもいる。
みんな、もうこの時点でかなりやる気のようだった。

そんな、世界でも稀に見るハイテンションの精鋭たちを満載した列車は、1時間ちょっとでブニョルの駅に到着。

駅へと降り立った私の周りに広がっていたのは、のんびりとして田舎町の景色。とてもこんな町で、あの「トマト祭り」が行われるとは信じられない。
人の流れに従って、町の中心部までテクテク歩いていく。

すると・・・歩いていくに連れて、徐々に遠くから歓声のようなものが聞こえるようになってきた。どうやら、ものすごい数の人が上げている時の声のようである。

えっ?まだ11時前のはずじゃ・・・。
もしや、もう祭りが始まっちゃってんの?

私と周りの人々は、少し顔を見合わせあって、心なしか歩くスピードを速めて町の中心部へと向かった。

そして、すぐに中心街(といっても大したものではないが)に到着。
その通りだけ、その田舎町には似つかわしくないほど、異様な人だかりで盛り上がっている。もう既に物凄い人出である。

その人の波を掻き分けて、通りの中へと入っていくと・・・

通り沿いにあるいくつかの家の窓から、住人が、眼下の大群衆に向かって、それぞれ遊び半分でホースで水をかけていたのだが、大群衆がそれに対して

ウォォォォォォォーッ!!!

と、地面を揺るがすようなトキの声を上げていたのである。

おいおい、ちょっと水をかけられただけでそんな物凄いリアクションなのか!?

ってか、

こいつらのテンション、

マジでヤバイッ!!!


私はチョイびびりながらも、その大群衆を掻き分けてどんどんと中心部へと進んでいった。

そして、周りを見渡してみると・・・既に酔っ払ってるヤツや、上半身裸のヤツはもちろん、ブーメラン型の水着1枚のムキムキ男性や、賢明にも既にゴーグルをつけている人もいる。もっとも、ゴーグルをつけるのは、まだ早すぎるとは思ったが。
いろんな人がいたが、全員の共通して言えることは、「祭りじゃなくてもテンション高そう」ということであった。中には、普通っぽい若者もいたが、大部分が、普段から意味なく脳内麻薬出してそうなやつらである。

そうして騒ぐこと1時間余。
もうこの時点で随分疲れてしまったのだが、もう後から後から人々が押し寄せ、もう外に出ることはできなくなってたし、まさかトマトを投げずに帰るわけにもいかない。

そうして、「そろそろトマト投げたいなぁ」と思っていた午後12時頃、突然町に空砲の音が鳴り響いた。

オオオオオオオオオオオオオオッ!!!

それまでにも増して、物凄い歓声があがった。
どうやら、祭りの開始のようだ。

・・・しかし、このスシ詰め状態で、どうやって中に投げるためのトマトを配るのだろうか?家々の屋上から投げ落とすのだろうか。
そもそも、「トマト祭り」といえば、「街中に、いくつかトマトの山が作られていて、参加者がそれをつかんで楽しく投げ合う」というイメージだったのだが・・・全然トマトが見当たらない。おまけに、そんな生易しいお祭りではないようだ。

すると、通りの端の方から、一段と物凄い歓声が上がった。
全員が、一斉にそちらの方を振り向く。

その視線の先には・・・


5トンダンプカー!!!

























トマトそんなに

投げあうのーーっ!?









・・・無理だって。







これから起こるであろうことに対して、さすがの私でも身震いを隠せなかった。若干嬉しい身震いである。

遠目で見ていると、どうやらダンプカーが、満載しているトマトを適当に降ろしながら、前へ前へと進んできているらしい。
そして、トマトがドバッと降ろされると、その時点からトマトの投げ合いが始まっているようであった。
周りの人間からは、

早く来い!早く来い!

と、各国語で叫びが上がっている。

そうして、近づいてくるダンプカーを見ているうちに、私は一つのことに気づいた。

その後ろからも、数台のダンプカーが、続々と人の波を掻き分けて進んでくるのである。

おいおい、

何十トン

トマト投げさせる気だ!?



どうやら、かなり気合の入った「祭り」になりそうだ。

そして、ノロノロと進むダンプカーは、遂に私たちの近くまで近づいてきた。しかし、1台目のトラックは、もうトマトを降ろし切ってしまったらしく、スルーである。

後に続く2台目。
これには、まだトマトはふんだんに残っているようである。
ダンプカーの荷台からドバドバ降ろされるトマトも、荷台の上からトマトを降ろし、ついでに群集に向かってなげつける人の姿も良く見える。

そして、遂にダンプの荷台が私たちの前に!
もう周囲は、トマトの降りてくる荷台の近くに殺到している。

そして、係員が荷台を地面に向けて傾けると、凄まじい量のトマトが地面に山のように投げ出された!



その山に向かって、

群集が殺到する!!!


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