トマト体験記:その1

98年バルセロナ。

夏のある日、周りの日本人の友達と話していると、その中で「8月の最終水曜日に、バレンシアの近くでトマト祭りが行われるらしいよ」というウワサを耳にした。

トマト祭り!?


あの、誰も彼もが、トマトを投げあうバカ全開のお祭りか!?

テレビでは見たことはあったが、何と、あれはバレンシアの近くでやっていたのか。バレンシアといえば、バルセロナから日帰りも可能な距離。そりゃあ、いっとかなきゃダメでしょう。

「うーん、じゃ、その祭り行ってくるわ。」

「えっ!?」

私は、その友達がびっくりするくらいの速さで「トマト祭り」行きを決め、その夜にはバレンシアのホテルに電話して宿泊を予約していた。

そして、祭りの2日前。

私はそれまでバレンシアには行ったことがなかったので、観光がてら早めにバレンシアに入ってみることにした。

バルセロナからバスに乗ること3時間余。
燦々と照りつける太陽の下に現れたバレンシアの町は、なかなか綺麗に整備された美しい町だった。

バスを降り、繁華街の中にある宿にチェックイン。
それまで、バレンシアといえば、「オレンジ」「パエリャ発祥の地」「サッカーチームが強い」くらいのイメージくらいしかなかったのだが、近くにある市庁舎や市場、どれも非常に美しい建物である。
また、昔「世界遺産」という番組で取り上げられていた「ラ・ロンハ」という交易所跡も、往時をしのばせる壮麗な作りであった。

そうして町を歩いていて、ふと周りを見渡してみると・・・やけに日本人の姿が目に付く。どうやら、彼らも、わざわざ「トマト祭り」に参加しに来たクレイジーピープルらしい。
私は、ヒソカに「同士たちよ」と思いつつ、そのうちの1つのグループと仲良くなって、彼らから祭りに関する情報を集めることにした。

彼らから集めた情報によると・・・

1.祭りはバレンシアの近くの「ブニョル」という町で行われるらしい。

2.ブニョルへは、バレンシアからローカル列車で1時間ほど。

3.祭り自体は正午から始まるらしいが、会場となる通りが狭いので、メインの戦場に入れなくなる前に到着した方がよい。

4.服は確実にトマト臭くなり、破られることもあるので、捨ててもいい上下セットで行くこと。


ということであった。

なるほど、要は「捨ててもいい服装で、明日の正午から『ブニョル』という町に行けばいい」ってことなんだね。

あと、彼らからは「今夜のバレンシアのホテル・ユースホステルは全て満室」という情報も耳にした。彼らは、もともと友達ではなく、バレンシアに着てからそれぞれ知り合ったグループだったのだが、そのうちの何人かは、実際まだホテルが見つかっていないらしかった。聞くと、どうやら駅で野宿するとか。
駅には、同じような日本人や西洋人旅行者が多く溜まっているとのことだった。

おお、そうなのか。
確かに、街中にうろついてるこんなにたくさんの旅行者を収容するだけの能力は、観光都市ではないバレンシアにはないだろう。
前もって予約しておいて良かった・・・。

ってか、さすがトマト祭りまでやってくるやつらである。宿がなかったら、あっさり駅での野宿を決めてしまうあたり、「さすが!」とうならずにはいられなかった。

そうして必要なだけの情報を手に入れると、私は彼らと夕食を共にした後、明日に備えてホテルへと戻った。

さぁ、明日は決戦の日だ。

そして、翌朝。
朝9時頃に起きた私は、軽く朝食を取って、期待に胸を膨らませつつ中央駅へと向かった。

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